DX化は、製造業における中長期の企業改革を推進する重要テーマとなりつつありますが、廃棄物処理業において、環境DX化の取組は、あまり進んでいません。
そこで環境DX化を考える上で、必要となる取組課題や、身近なDXテーマについて、5回シリーズで分かり易く解説いたします。
なお本記事は、(公財)産業廃棄物処理事業振興財団の経営戦略セミナー(2022年6月30日開催)の講演を参照しております。
社会課題への対応の必要性
世の中は既に社会課題への対応を行う大競争の時代に突入してます。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的なリスクや、経済安保の動きに加えて、環境分野では、カーボンニュートラルを進めるGX(グリーントランスフォーメーション)への対応、CE(サーキュラーエコノミー)などの世界的な動向の他、生産人口の急速な低下などを踏まえて、大手製造業等を中心に、明らかな「シフトチェンジ」が始まっております。
いずれ、廃棄物処理業においても、構造改革、行動変容、投資拡大による新たな市場創造など、多様で複雑な対応が求められてくることになります。
廃棄物処理業における環境DX化の構造
廃棄物処理業における環境DX化は、以下の3点で構成されます。
① 事業プロセス改革DX
② ビジネスモデル改革DX
③ 組織・業務改革型DX
まずは、外部環境に係る自社分析と将来目標を見極め、会社横断的な取組課題を明確とした後、DX戦略・DX実行計画と推進体制の構築を図ることになります。
その際、デジタル活用による効率化や、新たなビジネスモデルの構築を組み込んでおくことが必要です。
廃棄物処理業における外部環境
環境DXを進めるにあたり、廃棄物処理業に関わりが深い外部環境は以下の4点あり、その関係性とともに企業選択を巡る動向を踏まえて、取組みに反映する必要があります。
なお、これらの外部環境の詳細については、最終回(第5回)に詳しく解説いたします。
環境DX化の課題と展望
今回、大手産業廃棄物処理業者における環境DX化の推進状況を公表データをもとに調べるとともに、大手4社における環境DX化の取組み状況を把握した結果、下記のようなまとめが得られました。
VUCAな時代(未来の予測が難しくなること)に、産業界へのCN、GX、CE、DXの対応の求めに呼応して、廃棄物処理業においても同様の取組みが求められることになる。
環境DX化は、デジタル技術の導入による「効率化」、「コスト削減」のみならず、既存業務の変革と、新しい価値の創出を行うものであり、構想力、デジタルの活用、人的資本、バックキャスティングを活用した戦略的な取組みが必要となる。
環境DX化の取組みは、大手産業廃棄物処理業者でもほとんど進んでない。企業規模の大小に起因せず、中小企業においても十分な取組みは可能である。
環境DXに関して目標は挙げられているものの、まだまだ取組が進んでいないのが実情です。
環境DXに対応しないとどうなるか
今後の5年間を見通す中で「現状維持」の企業は、社会に取り残される可能性があり、結果として下記のようなことが考えられます。
いち早く世の中のニーズを捉えて、「環境DX」の取組が、廃棄物処理業の新たな成長のための「シフトチェンジ」につながります。
まとめ:DX化の課題と展望
昨今、「DX化」という言葉を頻繁に聞くようになってきましたが、本記事でご紹介した通り、実際のところはまだまだ構想段階である企業が多く、取組が行われていないのが現状です。
しかしDXに取り組まない企業は、今後益々社会から取り残されてしまう危険性がありますので、いち早く対応を進めることをお勧めします。
次回は、「第2回 環境DX化の検討方法は?流れをわかりやすく解説」という記事で、具体的にDXを検討していく流れについて解説します。