川越市の文化財でAI火災防止監視システムの実証実験を実施

川越市の文化財でAI火災防止監視システムの実証実験を実施

株式会社イーアイアイ(東京都千代田区 代表取締役社長:胡 浩)は、3月22日川越市教育委員会(川越市元町 教育長:新保 正俊)、セントラル警備保障株式会社と連携し、AI火災検知システム(Spark Eye)用いた文化財に対する火災防止監視システムの実証実験を実施しました。

実証に先立ち、川越市と㈱イーアイアイは覚書(文化財に対する火災検知システムの実証実験に関する覚書)を締結(令和3年9月)し、9月末から川越市指定文化財(史跡)内の原田家住宅東蔵(川越市松江町)において、Spark Eyeを設置し、技術システムの改良及び、警備会社と連携した火災検知後の通報等の社会実装の準備を進めてきました。

また、本技術システムの開発は、公益財団法人東京都中小企業振興公社から令和3年度先進的防災技術実用化支援事業「国宝・重要文化財等におけるAI火災防止監視システムの開発」の助成金を得て進めております。なお、本技術システムは、自治体清掃工場及び産業廃棄物処理施設における主としてリチウムイオン電池の破砕等に伴う火災の検知システムとして実績のあるシステムを基礎に、屋外での使用を前提に、クラウドを活用した24時間リアルタイムモニタリング機能を付加し、改良を施したものとなっております。

目次

実証実験の内容

1)文化財保護のための既存のSpark Eyeシステムの改良の効果検証

技術開発(改良)によりSpark Eyeシステムが以下の条件で有効に機能することの確認を行う。具体的には、安全状態のもとで、現地で実際の火(10㎝以上)の検知及びシステム機能の確認を行います。

①火災検知の機能と性能
・文化財を対象とした利用状況において、火を検知できること。
・カメラから約10m先の10㎝以上サイズの火を検知できること。
・警報レベル及び感度調整ができること。
・検知速度 0.05秒(最短)

②システム機能
・警報レベルの設定ができること。
・火災情報を記録し、クラウド可視化システムで自動保存すること。
・リアルタイム遠隔監視ができること。
・動画保存機能を有すること。

2)社会実装に向けた適用性の検証

火災検知後の対応として、警戒警備のシステムが上記と連動し、有効に機能することの確認を行います。

①火災検知後、コントロールユニットからセントラル警備保障㈱制御装置へ信号送信。
②信号を受け「ガードマン警報」として火災現場に急行。
③火災状況を現地にて判断した上で消防(119)へ連絡。
④さらに、一次対応として消火活動を実施。
⑤鎮火後、消防に画像データを提供。
⑥なお、クラウドシステムによる情報の送信(メール)は、①と同時に、文化財管理者である川越市文化財保護課向けに行う。
※クラウドシステム;メール送信及び映像情報を管理し、火災状況を通知するもの。

実証実験の状況と成果

実証実験では、川越市教育委員会文化財保護課の立ち会いのもと、原田家住宅東蔵(写真1,2,3)の監視エリアにおいて10㎝以上の火を作った(写真4)結果、それをSpark Eyeが検知し、設定レベルに到達後はセントラル警備保障の制御装置(写真5,6)を介して指令センターに無事通報されました。

また、同時に、クラウドシステムを通して、文化財管理者向けに写真付きの発災メールと消火メールが送付され、火災状況の即時確認が行われました。

上記の結果、Spark Eyeは、屋外の監視対象エリアにおいて、火災検知、誤検知の抑止と、火災監視映像の確認(消防への提供)ができる防火・防犯システムとして十分に要件を満たすという結果が得られました。

屋外での防火システムは、文化財等の放火等による焼失を抑制でき、誤作動が少ない運用が課題となっておりますが、本システムの運用により、課題の解決につながる可能性が得られました。

川越市との連携経緯と実証実験の目的

川越市は、指定文化財250件(国指定13件、県指定42件、市指定195件)、国の重要伝統的建造物群保存地区1件、重要美術品2件、登録有形文化財12件、登録記念物1件の総計266件(令和3年3月時点)の文化財が所在する県内有数の自治体となっております。

中でも建造物関係は指定・登録を含め77件(国、県、市指定と国登録)あり、さらに国の重要伝統的建造物群保存地区内には136件の伝統的建造物が市民生活圏の中に存在しており、文化財の保全、継承を柱とした歴史都市を形成されております。

建造物に関する文化財保全や継承で考慮すべき事項の一つに、近年、「火災防止」の取り組みの重要度が増しており、中でも火災原因として多い「放火」による焼失を抑止する新しい技術としてAI火災検知システム「Spark Eye」を用いた技術システムの改良を進めてきました。

 ※(参考)重要文化財の火災原因(㈱沖縄タイムス社資料より)

放火27.9% 原因不明(特定に至らない)25.5% 飛び火16.2% 不始末12.7%

花火10.5% 類焼4.7% 落雷0.3%

その上で、「歴史的かつ地域的価値を有する文化財を予期せぬ「火災」から守り、損失を最小限にするため、最新の技術を用いた検知システム活用の効果を実証実験する(※覚書第1項 目的より)」こととしました。

実証実験は、Spark Eyeを実証現場に実際に設置した上で、AI火災防止監視システムの有効性の確認とともに、社会実装に向けた適応性を検証するため、警報通知後の行政、警備会社、消防との連携のあり方などの検討を行うものとしております。

火災防止監視システム「Spark Eye」の機能

火災防止監視システム「Spark Eye」は「火」自体を画像認識、分析することで従来の熱、煙等の検知機器より早いタイミングで火の状況を捉えリアルタイムに検知を知らせることが可能で、素早い消火活動に寄与することができます。

(主な機能)

  • 画像認識技術を活用し「火」をリアルタイムに検知可能
  • 検出速度0.05秒以下の能力を持ち、瞬時の火花を検知、かつ昼夜検知可能
  • 感度調整、発報条件を制御することで誤検知の抑止ができる
  • 火発生後、警備会社の制御盤に発報し、警戒警備を進める
  • 火発生時と終了時に設定したメーリングリストへ画像付の火災発生状況を送信
  • 24時間監視カメラ機能、動画保存機能を保有しており、警備会社・消防向けに情報報告が図れる。
  • 検知画像、発生日時、場所、発生時刻・終了時刻等の情報を可視化データベース化
  • 文化財火災情報の蓄積により将来的な火災対応分析や安心・安全策構築に活用

最後に

沖縄の首里城の火災のニュースは皆さんの記憶に残っているかと思いますが、このような火災事故で日本の大切な文化財産を一瞬で失ってしまうケースもあります。

日本の文化財産は現世だけのものではなく、後世の日本人にも残すべく、AIのような新しい技術(弊社 Spark Eye)と既存のシステム(セントラル警備保障様のガードマン警報)を組み合わせることで、より強固な防火対策を構築することが必要になってきております。

火災はいつどんな状況で発生するか予測がつかないので、気づいた時点で早めの対策を行うことが必要です。

その際には今回ご紹介した事例を参考にAIを用いた新しい技術での対策をご検討してみてはいかがでしょうか。

川越市の文化財でAI火災防止監視システムの実証実験を実施

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