これまで廃棄物処理業の環境DX化の検討の流れや、大手事業者における検討状況の他、取組ポイント等について解説してきました。
そこで今回は、環境DXの項目として実際に考えられる項目を例示し、内容の解説します。
廃棄物処理業における環境DX化の構造
廃棄物処理業における環境DXは、以下の3つの要素からなっています。
これらは、自社を取り巻く社会・市場・技術トレンドや、デジタルプラットフォームを組み合わせることで、顧客への優位性の向上に結びついてくると考えられます。
具体的な項目について、次項から紹介させていただきます。
環境DXの検討項目
組織・業務改革は、主に「営業管理」や、「業務管理」分野において、業務の効率化や、AI/IoTなどの最新メディアツールなどを用いた営業展開などを進めるアイデアを取り入れるため、ソフトウェア会社が力を入れています。
これらは、「デジタイゼーション」、「デジタライゼーション」に留まることなく、SaaSシステム(低価格で拡大し、柔軟にシステムの更新・拡張ができる)、一気通貫のシステム(単一機能のIT投資でなく一連のシステムが結合し、営業・業務評価指標の分析に使用できる)に代表されるような拡張性が求められています。
この「営業管理」や「業務管理」以外のDXの取組として、「事業プロセス」や「ビジネスモデル」の改革が求められており、下記のような改革が必要です。
① 事業プロセス改革
大項目 | 小項目 | 内容 | 現在の対応 |
工場管理 | 設備保全システム | メンテナンス項目、メンテ履歴のDB化や、スマートグラスを用いた設備保全の容易化・システム化 | メンテナンス項目、履歴を設備保全に活かしにくいー手間 |
予備品管理の効率化 | 日常の機器メンテナンス情報と、予備品の在庫状況の見える化を連動させ、欠品による運営への支障が生じないようにする | 予備品の在庫状況の見える化がなされていない | |
日常の点検の効率化 | スマートグラスを用いた精緻な対応、マニュアルの容易な確認 | 熟練者による現場経験の共有がうまく進まなかった | |
報告書の作成効率化 | タブレットを用いた点検情報の効率的なまとめと、幅広い情報共有 | 紙に点検結果を記載し、報告書を別途とりまとめ | |
場内清掃の自動化 | 床の散乱物(廃プラ、埃等)を自動清掃・回収※自動掃除機 | 適時、人手により清掃し、散乱物を回収する | |
運搬の効率化 | 自動配車システムの構築 | 配車をAIアルゴリズムにより自動化することで、効率的な管理を行う、CO2の排出削減に結びつく ※現在、基幹システム(受注、契約、配車、処理管理、売上管理、請求)と連動したシステム開発が進められている | 配車担当の手間を要すること、属人化による対応 |
自動化・機械化 | 開梱作業の自動化 | 段ボールを自動で開梱し、製品(リチウム電池有無)、紙、廃プラ、金属などに選別 | リースバック品、EC返品不良部品等のカスタマー回収品を人手により開梱し、分別 |
展開確認・粗選別の自動化(土間) | 建設混合廃棄物をダンプアップ後に、選別ロボットが粗選別を自動で行う | 大きな廃プラ、木くず、石膏ボード、段ボール等をペイローダ+人手で回収 | |
廃棄物投入・出荷の自動化 | 建設混合廃棄物、廃プラ等を対象に、無人のショベルローダーが廃棄物・処理成果物を自動投入する | 定型的な作業。ショベルローダ―を用いて廃棄物のピット投入等を実施 | |
手選別の自動化(ベルトコンベヤ上) | AI選別ロボットを用いて廃棄物を選別回収する ※スマートメガネを用いた手選別支援システム、ハイパースペクトルカメラを用いた廃プラ素材選別等も可能 | 破砕禁忌品、紙くず、廃プラ、木くず、コンクリート塊等を手選別で回収する | |
選別回収物の場内横持ち、コンテナへの詰め替えの自動化 | 定型的な繰り返し作業を対象に、人に代わり、AGV、反転装置などを用いて自動で対応する | 人がフォークリフトを用いて場内を運搬する定型的な作業を行っている | |
自動車解体の自動化 | 危険防止を考慮し、EVバッテリーの撤去及び自動回収を行う | クレーンを用いて、人手により回収されている | |
自動車解体の自動化 | リユース対象部品を抜き取り後の躯体解体及び素材選別を自動化ロボットを用いて行う | 自動車解体専用のユンボ用いて銅線、アルミ等を素材別に回収後、鉄はプレス処理を行う |
② ビジネスモデル改革
大項目 | 小項目 | 内容 | 現在の対応 |
事業創出 | 選別事業の展開 | ASR、SR(可燃、不燃混合)、建設混合残渣(建設系廃プラ、紙、木、繊維くず)の選別による廃プラを選別回収し、ケミカルリサイクルに提供する | セメント、非鉄製錬による熱回収処理 |
非焼却事業の展開 | 産業系の混合廃棄物中から廃プラを選別回収し、ケミカルリサイクルに提供する | 焼却、埋立処分 | |
製品素材の蓄積状況の把握 | バリューチェーンで連携したCEの取組みの一環として、製品の製造、利用、回収・処理、再製造において、ブロックチェーンによるトレーサビリティと、AIによる状態把握を踏まえて、より高次元の素材流通(非鉄金属、廃プラ素材)を行う。バリューチェーンを担う企業の一員として「選択」される | バリューチェーンで連携したCEの取組は、これまでなし | |
自社のCO2カウント | Scope3に対応した自社の廃棄物処理に伴うCO2排出量の算定と製造業への提供をスムーズに行う。バリューチェーンを担う企業の一員として「選択」される | CO2排出量は未カウント(※処理区分ごとのScope1,2把握も困難) |
③ 組織・業務改革
大項目 | 小項目 | 内容 | 現在の対応 |
営業管理 | MA(マーケティングオートメーション)の導入 | 収益向上を目的にマーケティング活動を自動化し管理の効率化を図る。SFA(営業活動の支援システム)、CRM(顧客情報の管理と、自社の従業員やサービスとの接点を記録するプラットフォーム) | 営業対応が属人化する結果、営業データがバラバラに管理されている。 |
リモート見学会 | リモートで大勢の顧客との設定ができる | 外部受入の可否、現場調整の負担が大きい | |
リモート展示会 | 低コストで、大勢の顧客との接点ができる | オフライン対応の実施可否、費用面の負担が大きい | |
Web受注の開発 | 効率良い受注と、相互確認が容易に行える | 電話、メール等による相互調整・確認が手間 | |
業務 管理 | 基幹システムの更新 | 受注、契約、配車、処理管理、売上管理、請求まで一貫処理ができ、SaaSシステムの活用で、機能更新等の対応が容易 | ソフトウェアが乱立。ソフト契約期限後は、ソフト入替え、更新が必要となる |
情報共有のシステム化 | 部門間をまたぐ、グループごとに情報共有が容易に行える | 情報共有は、メール等による | |
RPAシステムの導入 | 様々な書類、帳票の機械入力により、業務の大幅な効率化が図れる | 書類を見てPCに転記したり、文書間で再度入力が必要 | |
インボイス制度への対応 | 改正電帳法に伴い適格請求書の作成のための対応(2023年4月)。ITツール(会計ソフト・受発注ソフトなど)による業務効率化が可能 | 未対応のため、人力による複雑な処理が必要 |
㈱イーアイアイの取組メニュー
環境DXを行っていく上で、これまで挙げたような内容を着実に実行していかなければなりません。
当社では、以下のようなDX化のツール開発として、自社オリジナルの技術開発進めており、これらの製品を用いて環境DXの推進を行っていきたいと考えております。
終わりに
今回は産業廃棄物業界における環境DXの構造や具体的に取り組んでいく内容に関してご説明しました。
次回は、最終回として、「第5回 環境DX化に関連性のある外部環境・政策の動向」において、環境DXを巡る社会・市場・技術トレンドについて照会して解説を行います。